茨城県議会
令和6年
第4回定例会
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▼令和6年12月の一般質問より
1.カーボンニュートラルの実現に向けた取組について
平均気温は観測史上最高となり2015年パリ協定目標に反し、初めて産業革命前から1.5℃を超える。
2023年GX推進法が制定され、国債発行の20兆円先行投資、今年5月には水素社会推進法制定など取組が加速。2040年への国家戦略「GX2040ビジョン」に加え、「地球温暖化対策計画」及び「エネルギー基本計画」の素案提示で取組強化が求められる。
本県は、産業部門のCO₂排出量の割合が全体の60%(全国平均は34%)を超え、その9割近くが臨海部の大規模事業所からという特徴。
1 産業分野における取組の推進

令和3年にいばらきカーボンニュートラル産業拠点創出プロジェクトを、令和4年には鹿島港と茨城港を脱炭素の拠点とするカーボンニュートラルポート形成ワーキンググループを設置、令和5年には全国初となる港湾脱炭素化推進計画を作成・公表した。カーボンバケットの観点から次世代エネルギーの技術開発が進み、早期社会実装に期待を寄せる。
ロサンゼルス港とロングビーチ港両港調査では、貨物輸送のゼロ・エミッション化や地産地消型クリーン水素サプライチェーン構築等を目指す取組を、環境対策および港湾競争力強化として位置付けており、本県でも地理的優位性と脱炭素化という強みを兼備えた、国内外の荷主や船社から選ばれる港湾形成を期待する。関係機関が連携・協働を深化させ、プロジェクトを順調に進められたい。
“カーボンニュートラル産業拠点創出に向けて、どのように取組むか。”

国際競争力強化や新産業の創出に繋げる「いばらきカーボンニュートラル産業拠点創出推進協議会」を立ち上げ、200億円の基金を含むモデル構築から設備投資までの一貫的な支援体制を整える。
水素サプライチェーン構築に向けては、鹿島地区において、民間主導での実行可能性調査に対し支援し、地区全体での検討を加速化させ、本県産業の基盤となるクリーンエネルギー拠点を構築すべく取組む。
2 県民や中小企業への取組促進

本県のCO₂排出量の残る4割は、運輸部門、業務部門、家庭部門などが占めており、日常生活の場面での環境負荷の軽減への転換が求められる。
県内の企業の大半である中小企業における取組は県内企業全体では大きな効果となり、環境配慮の意識が地域社会へ広がることも期待する。
“県民や中小企業、市町村に、どのように取組を促進していくのか。”

事業者向けには、約870の中小規模事業者を対象に「省エネルギー診断」を実施し、合計約1万4千トンの二酸化炭素排出量削減改善を提案。
併せて、「省エネ補助金」などで設備導入促進を図る。家庭向け「いばらきエコチャレンジ」では、7万超世帯に省エネ行動を実施いただき、今年度は「冬のCO₂削減キャンペーン」とし自発的な行動変容への情報発信に取組む。運輸部門は、エコカーへ買換えや公共交通機関利用促進施策などを推進。2021年度の本県温室効果ガス排出量は、2013年基準年度から業務部門19.9%減、家庭部門20.9%減、運輸部門14.6%減と進む。
市町村職員等対象研修会、公共施設等の再エネ導入手引書の作成・周知での市町村取組も支援し、更にモデル地域選定での支援と結果共有により地産地消型の再エネ導入を促進する。
2.DXによる業務の効率化と県民サービスの向上について

本県は、電子決済やテレワーク環境整備、各種行政手続のオンライン化などデジタル化を推進し、民間算出の「電子化推進度ランキング」で全国1位の評価。
行政課題が複雑化・多様化し人材確保も厳しさ増す中、進化を遂げるChatGPTなど生成AIのデジタル技術導入は、業務効率化や自動化に加え、職員の専門的知識をデジタル化共有で、県民サービス向上に繋げる。生じる時間は、県民との対話による新たな政策企画立案や、地域の課題解決など付加価値の高い業務に振り向けていく。
“県民サービスの質の向上に向け、DXによる業務効率化をどのように進めていくのか。”

第2次県総合計画の「スマート自治体の実現に向けたDXの推進」に基づき、RPAなどのデジタル技術を活用し、定型的な業務を自動化や立会人型電子契約を導入するなど、全国に先駆けて行政のDXを推進。
RPAでは、5年間で105業務に導入し、各種支払業務においての財務会計システム自動化で1件当たりの処理時間数が12分から2分へと短縮し、年間約3,300時間削減と試算。県税業務の「自動車税納税確認システム」で4カ月約7万件の利用で電話対応を約1,700時間削減と試算。ChatGPTなど新しいデジタル技術である生成AIの本格導入と全庁での積極的な活用を進めている。
3.一人当たり県民所得伸長の要因分析と政策立案への活用について

内閣府発表の2021年度県民経済計算の全国都道府県推計結果では、本県の一人当たり県民所得は30万2千円増の343万8千円で過去最高の全国第3位となる。また、実質経済成長率は第4位、名目経済成長率は第5位となり、本県経済の力強さが示された。
背景には、製造業や建設業などが伸長した一方で、農林水産業や電気・ガス・水道・廃棄物処理業など、伸び悩みが見られ、変動要因を詳細に分析することが重要。統計データ等の客観的証拠で本県経済を把握することは、経験や直感だけではなく、合理的根拠に基づく分析や検証で得られた知見を組織全体で共有していくことを可能とし、質の高い政策を形成する。今回の包括的経済指標分析は、政策全般を検証する上で貴重な機会である。
“今回の県民所得伸長要因をどう分析し、今後の政策立案にどう活用していくのか。”

県内各地域の特性を活かした産業の振興、企業の海外展開支援や戦略的な企業誘致、雇用の創出などが経済力を高めた。県民所得の源泉となる県内総生産と構成要素である各産業の動向を客観的なデータに基づき分析することが重要。
製造業は総生産が名目+12%(国内外経済の回復を受け鉄鋼や生産用機械などの生産大幅増加が要因)、建設業は+14%(民間企業設備投資の進展を背景に建設投資が増加が要因)と高い伸びだった一方で、電気・ガス・水道・廃棄物処理業では-14.5%(需要回復などで化石燃料の価格が高騰し、火力発電中心の電気業減益が要因)と最も伸び悩んだ。農林水産業では-7.0%(コロナ禍(か)での米の消費低迷、在庫過剰で価格の大幅下落が主な要因)などと分析する。客観的な証拠を政策立案や効果検証に活用し様々な困難な課題に打ち勝つ、「活力があり、県民が日本一幸せな県」の実現に挑戦する。
4.持続可能な水田農業の確立について
1 水田の経営安定対策

肥料や燃料費高騰などの農家経営圧迫を鑑み、米の価格高騰は喜ばしい一方で、消費者目線では、物価高騰が続く中の主食値上がりは大打撃となる。需給バランスを保つ重要性が浮き彫りになり、行政の適切な舵取りを願う。1等米比率はコシヒカリの49.5%と深刻で、早急な高温対策が必要。
“持続可能な水田農業の確立に向け、水田の経営安定対策にどのように取り組んでいくのか。”

水田農業経営には、中長期的な視点での需要に応じた生産による米価の安定と、収益性の高い農業構造への転換を進める。米の作付計画には、需要動向を農業者や関係団体が正確に把握することが重要であり在庫量などの情報を丁寧に発信する。収益性の高い農業構造転換への「水稲メガファーム事業」、特色ある米づくりをより一層推進する「いばらき米の極み頂上コンテスト」、「にじのきらめき」の奨励品種への格上・作付拡大と新品種の開発など、水田農業が持続的に発展していけるよう取組む。
2 基盤整備の推進及び農業水利施設の老朽化対策

世界的な食料情勢の変化に伴う食料安全保障上リスクの高まりや、地球環境問題への対応、海外市場の拡大等、農業情勢の変化を踏まえ「食料・農業・農村基本法改正法」が成立。条文に「保全」という言葉が加わり、既存設備老朽化対応が拡充され、新たに防災・減災の視点やスマート農業の適合整備が位置づけられた。
基盤整備完了から30〜50年の地域で、用水機場やパイプラインなどが老朽化、メンテナンス費用が負担となり、適正規模区画での再整備を望む声が多い。
生産者や地権者などの御意見に応じた環境であり且つ地元負担が軽減される整備が急務。
“今後の再整備や農業水利施設の老朽化対策も含めてどのように基盤整備を推進していくのか。”

長引く物価高騰等により、老朽化した施設の補修費や電気料金等の維持管理費が増加しており、営農継続に向けた不安要因となる懸念があることから、生産コストの低減に繋がる農業水利施設等の整備が重要。
今後、将来の営農構想を描き、関係者の合意形成と儲かる農業を意識した基盤整備に取組む。農業水利施設の老朽化対策は、用水機場やパイプライン等を自然圧方式に変更する電気料金軽減や、用水施設の統廃合による維持管理費削減に取り組む。
基盤整備事業の実施には、農家負担軽減される事業の活用や、維持管理費を見据えた適切な整備水準も検討する。地域によって異なる意見や要望を受け止め、儲かる農業に向けた再整備や老朽化対策等の基盤整備を進めていく。
5.国土強靭化をはじめとするインフラの整備推進について

昨年6月の梅雨前線および台風により浸水被害が発生したところであり、いかに頻発・激甚化する自然災害に備えるかが大きな課題となる。年明けの能登半島地震でも家屋倒壊・道路閉塞等により甚大な被害が生じ、公共インフラの強靱化と備えの大切さを認識。
2018年度から、国土強靭化基本計画に基づく防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策、2021年度からは5か年加速化対策の別枠予算を活用するなど対策が重点的・集中的に講じられてきた。
昨今の気候変動や災害の状況を踏まえると、引き続き重点的に桜川など河川整備を継続し、道路についても、中根金田台地区の上野花室線をはじめ、宅地・大型商業地開発による交通渋滞に新たな道路ネットワーク整備も急務である。
“国において国土強靱化次期計画の策定準備を踏まえ、県として、今後、インフラの整備をどのように推進していくのか。”

高度成長期以降に集中的に整備されたインフラの急速な老朽化が懸念され、中長期的なトータルコスト増大を抑制し適切に対応していくことが求められる。これまで「3か年緊急対策」、「5か年加速化対策」の予算を活用して、橋梁の長寿命化や耐震化、緊急輸送道路ネットワークを強化、河川の治水安全度の向上や津波高潮への対策強化が図られ、改正された国土強靱化基本法では、次の実施計画となる「国土強靱化実施中期計画」の策定を義務付けた。
人口減少にあっても、本県の活力をさらに高めていくためには、国の補助事業や交付金事業を有効に活用するとともに、地元市町村等と連携を図りながら、災害・危機に強い県づくりを推進する。
6.子どもの読書活動の推進について

文化庁の「国語に関する世論調査」により、16歳以上の国民の約6割が1か月間に1冊も本を読まないとされ読書離れの深刻さが浮き彫りとなる。
読書は、言語能力向上はもとより、想像力・思考力を育み、人生を豊かにする重要な知的活動。睡眠の質の向上や、ストレス軽減、認知機能の維持など、科学的にも様々な効果が期待される。
特に子どもたちには、読書を通じて多様な考えや価値観に触れることは、これからの予測困難な社会を生き抜くうえで必要不可欠な、創造的思考力育成の重要な機会。
学校図書館は、単なる本の保管場所ではなく、子どもたちの知的好奇心を刺激し、主体的な学びを支援する重要な教育施設である。
“読書活動の推進について、今後どのように取り組んでいくのか、教育長にお伺いします。”

「いばらき子ども読書活動推進計画」を策定し、読書活動のより一層の推進に取り組んでいる。小中学校では、図書委員の児童生徒と保護者など地域ボランティアが、季節や学校行事に合わせて、本の配置を工夫し掲示物を作成するなどの魅力的な図書室づくりを進め、「本の福袋」「読書マラソン」などの取組で楽しみながら読書に親しめるよう取組む。高校では、入学後や国語の授業の際に図書の有効な活用方法や本を読むことの奥深さを紹介し、人生を変える一冊と出会えるように努めている。生徒同士が自己表現力を養いながら本の魅力を伝えるビブリオバトルも開催している。
様々な有効な取組をHPなどで情報発信、教員研修の機会でも具体的事例などを共有し、全ての学校での取組につなげていく。
読書を通じて多様な考えや価値観に触れ、作者の考えを読み解き深く考えることで、未来を切り拓く力を身に付け、豊かな人生を送ることができるよう、子どもたちの読書活動の推進に取組んでいく。
交通政策
・物流問題
調査特別委員会
運転手の人手不足を背景にバスの減便や廃止が相次ぐなど、私たちの「移動の足」に関する問題が深刻化しています。また、いわゆる「2024年問題」などを背景に、物流の効率化なども課題となっています。
そのような中、「公共交通及び物流に関する諸方策の在り方」について調査・検討を行うため、令和6年の第1回定例会で「交通政策・物流問題調査特別委員会」が設置されました。県執行部からの説明聴取だけでなく、現地調査(水郡線、宇都宮ライトレールなど)も実施するとともに、学生を含め、様々な有識者をお招きして意見交換を行い、県に対する全56項目の提言を副委員長として取りまとめました。
国に対しては、「公共交通及び物流に関する対策の充実・強化を求める意見書」を発議し、国の対応が必要な事項にも要望を行いました。
人口減少や高齢化の進展といった課題を抱える茨城県にも、公共交通と物流のシステムを持続可能なものとできるよう、国・県・市町村の連携の下、提言を踏まえた取組をすすめてまいります。
1 公共交通関係
- バス事業者に対する地域間幹線系統の補助金の満額補助の実現
- 接続関係にある鉄道・バスの運行ダイヤの利用者本位の編成
- 死亡事故が発生するなど構造的に課題のある踏切への安全対策
- 持続可能な水郡線の振興のための県境を越えた連携強化
- 湊線の延伸実現に向けた県としての支援の検討
- DXの視点に立った交通事業者に対する支援の強化
- 自家用有償旅客運送におけるエリアや実施時間帯の適切な設定
- 九州MaaSなどを参考とした、より広域的なワンストップ移動サービスの枠組み構築に向けた検討
- 外国人材の運転手であっても県民が不安なく公共交通を利用できるようにするための対策
- タクシーの運転に必要となる第二種免許制度の抜本的な改正など、今の時代に求められる在り方の検討
- 免許を自主返納した高齢者の目線に立った公共交通の環境整備
- 幼少期からバスの魅力を感じてもらえる取組の充実